Victorの「HA-FX100T」は現状ワイヤレスイヤホンの中では一番のお気に入りです。
オーケストラを聴くならガチでおすすめのワイヤレスイヤホンで、ワンランク上の価格帯のイヤホンやハイレゾ対応イヤホンにも劣らないクオリティの音が楽しめます。「そこそこの価格でハイレゾ相当の良い音を聴きたい」という方におすすめのイヤホンです。
音質、音の特徴まで詳しくレビューしているので、「HA-FX100T」が気になっていた方はぜひ最後まで読んでいってください。
なお、操作方法やペアリングのやり方、操作時のトラブルの対処方法は下の記事でまとめています。
「HA-FX100T」付属の「スパイラルドット」シリーズの高グレードイヤーピースについては下の記事でまとめています。
管理人は有軸接続アンプによるハイレゾ環境、「TuneBrowser」によるリサンプリング環境などを整えて音楽鑑賞を行ってはいるものの、音楽関係のプロというわけではありません。
あくまでも趣味で音楽やイヤホンの音を楽しんでいるだけで、音質等に関する説明は専門的知見からではなく「一般人(素人)が聴いた時にこう感じる」という感覚的なものになります。また、音に関する説明はわかりやすさを重視していますが、人によって受け取り方や表現が変わりやすい事柄であることをあらかじめご了承ください。
※音楽のジャンルについては私自身が普段よく聴くものや大雑把に分類している基準で取り上げています。「オーケストラ」や「ハイレゾ」はあくまでも好みや比較のために入れているので厳密なものではありません。
Victor「HA-FX100」の良いところ
先に「HA-FX100T」の良いところをまとめておくと、このようになります。
Victor 「HA-FX100」の悪いところ
「HA-FX100T」の悪いところについては以下の通りです。
Victor「HA-FX100T」のスペック
「HA-FX100T」のスペックは以下の通りです。
項目 | 詳細 |
---|---|
型番 | HA‐FX100T |
Bluetooth規格 | Bluetooth5.1 |
コーデック | aptX、AAC、SBC |
連続再生時間 | 最大8時間 充電ケース込みで最大28時間 |
充電時間 | イヤホン:約2.5時間 充電ケース:約3時間 |
重量 | イヤホン片耳:約4.5g(実測4.2g) 充電ケース:約41g(実測40.5g) |
付属品 | スパイラルドットイヤーピース(S/MS/M/ML/L)各2個 充電用USB Type-Cケーブル 充電ケース |
【コーデック】高音質対応・ハイレゾと低遅延は非対応
「HA-FX100T」の対応コーデックは aptX、AAC、SBCの3種類です。
コーデック | 対応デバイス | 音質 | 遅延 |
---|---|---|---|
aptX | Android系 | ◯ | ◯ |
AAC | Apple系 | ◯ | ◯ |
SBC | 全て | × | × |
各コーデックはこのように対応デバイスが異なり、高音質で接続したいならaptXかAACになります。
ただしaptXもAACも俗にいうハイレゾや低遅延には対応していません。
ハイレゾ対応であればaptX HDやLDAC、ゲームや映画用に音ズレをなくしたいなら低遅延対応のaptX LLで接続する必要があります。逆にハイレゾ音源は持っていないしゲームにも使わない、ということならaptXかAACで普段使いとしては十分です。
Victor「HA-FX100T」の音質・音の傾向
「HA-FX100T」はハイレゾには対応していないものの、独特な味わいの非常に魅力のある音を出してくれます。
音質は原音に忠実でありつつも特徴的な部分があるので、私にとっては大のお気に入りイヤホンですが人によって好みが分かれるかもしれません。「HA-FX100T」の音の特徴について詳しくまとめていきます。
【特徴】独自の音響構造によりイヤホン内部で音が反響する
まず「HA-FX100T」ならではの特徴として押さえておきたいのが、独自構造の「音響調整空間」です。
小型ボディでありながら、ドライバーユニットの背面に音響のための空間をしっかりと確保しており、心地よいゆとりのある低音とワイドレンジな音を実現
引用:ワイヤレスステレオヘッドセット HA-FX100T | ヘッドホン・ イヤホン | VICTOR
ドライバーユニットの背面にあえて空洞を設けることで、音がイヤホン内部で反響するようになっています。
音の反響でコンサートホールにいるような臨場感
Victorの公式サイトではさらっと書いていますが、この音響構造が本当にすごいです。
公式サイトの「心地よいゆとりのある低音とワイドレンジな音」という表現だとイメージしにくいですが、よくレビューなどで言われる「音場(音が聴こえる空間)の広さがすごい」の方がわかりやすいかもしれません。
ひとつひとつの音がイヤホン内部で響き合って耳に届くため、まるでコンサートホールで聴いているくらいの迫力と臨場感が伝わります。
他のイヤホンでは感じられないような音の広がりと厚みがあって、耳を包み込むように全方向から音が聴こえるんです。
音全体のまとまりが非常に良いので、「音を楽しむ」という目的にかけては同価格帯(15,000円程度)のヘッドホンや、数万円クラスのハイレゾイヤホンにも引けを取りません。
この音の響きの良さはおそらくイヤーピース「スパイラルドット」も関わっています。
「HA-FX100T」のイヤーピースは特殊な作りになっていて、内部にドットのくぼみがあります。この穴によってイヤーピース内部で反射する音を拡散している、とのこと。イヤホン内部で反響させた音が汚くならないように一役買っているわけですね。
これだけでも十分効果はありますが、「なんだか音が反響し過ぎてるな」と感じる方は「<分離感は改善可能>「スパイラルドット++」を使うとクッキリ」で解説しているようにイヤーピースを変えればさらにクリアにすることも可能です。
音響構造は音全体に装飾がかかるので好みがわかれるポイント
ただ音を反響させている分、全体が装飾された感じになってしまう部分があります。
原音を変に強調したり抑え込んだりしているわけではないのですが、音が拡張されているのは確かなので好みは分かれそうです。私はこの音の拡張、増幅された音がとても耳に心地好かったので「HA-FX100T」がお気に入りのワイヤレスイヤホンになっています。
個人的には全然アリなんですが、この鳴り方を「響き過ぎ」「うるさい」と感じる人も多分います。
聴き流しや作業用BGMには向かない
それと「HA-FX100T」は聴き流しや作業用BGMにはあまり向いていません。
音響構造で音が反響している影響で、耳に届く音の情報量が非常に多いです。作業用BGMは集中の妨げにならないように音の情報量が少ない方が良いとされているので、「HA-FX100T」は適した用途が少し違いますね(もちろん使えないわけではないんですが)。
どちらかというと、じっくり集中して聴くための音楽鑑賞用イヤホンとしての使用がおすすめです。
【音楽ジャンル】クラシックやオーケストラがおすすめ
「HA-FX100T」で音楽を聴く時に最もおすすめしたいのは楽器の数が多いオーケストラです。
ジャンル | 適正 | ジャンル | 適正 | ジャンル | 適正 |
---|---|---|---|---|---|
ポップス | ◯ | ジャズ | ◯ | サントラ・BGM | ◯ |
ロック | △ | エスニック | ◯ | オーケストラ | ◎ |
クラシック | ◎ | EDM | △ | ハイレゾ | ◯ |
「【特徴】独自の音響構造によりイヤホン内部で音が反響する」で解説したように、「HA-FX100T」は独特な音響構造を採用しているのでイヤホン内部で音が反響し増幅されます。そのため、音の数が多いほど反響効果が大きくなり豊かな表現になります。
オーケストラのように音に厚みがある曲は、イヤホン内部で反響してコンサートホールで聴いているような響き方になるのでおすすめです。
一方で、EDMやロックは「HA-FX100T」にはあまり向いていません。
電子音やエレキギターの音など特定の音を押し出すような曲だと、一部の音だけが強調され過ぎてうるさい感じが出てしまいます。
【音域】重みのある低音と超高音でも割れない音域の広さ
音域でいうと、「HA-FX100T」は高音から低音までバランス良くまとまっています。
音域 | 適正 | 音域 | 適正 | 音域 | 適正 |
---|---|---|---|---|---|
高音域 | ◎ | 中音域 | △ | 低音域 | ◯ |
いずれかの音域が強めに調整されているわけではなく、高音から低音まで特に癖なく綺麗に聴かせてくれます。あえてクオリティを比較するとしたら、高音域>低音域>中音域のような感じです。
<高音>極限まで高くても音割れせずに表現できる
高音・中音・低音いずれも優秀な「Ha-FX100T」ですが、最も得意なのは高音です。
私が聴く曲の中で「ON YOUR MARK」には20,000Hz(15kHz)あたりの超高音が主役になるフレーズがあるのですが、この部分を綺麗に出すのはかなり難しいらしく、イヤホンやスピーカーによっては音が潰れて耳障りなノイズが混じってしまいます。
人間が聴き取れる音が20Hz~20,000Hz(20kHz)といわれているので、限界ギリギリくらいの高さの音ですね。この20,000Hzを「HA-FX100T」は綺麗に出せるんです。
「TuneBrowser」のスペクトルでいうと、黄色枠で囲ったあたりが高音域にあたる部分です。
ちょうど人が高い声を出そうとした時に出しきれなくてダミ声になるのと似ていて、大音量で再生しようとすると高音だけ音割れするような状況になるんですよね。
ですが「HA-FX100T」は20,000Hzの高音でも一切割れずに表現してくれます。ピアノなど高音が多い曲をよく聴く人には本当におすすめです。
<中音>表現力はボーカルの性別や声質に依存する
中音域、ボーナルは声質を選びます。中音域はおおよそ下画像の範囲です。
高音をものすごく綺麗に出すのが「HA-FX100」の特徴なので、声の高い女性ボーカルが歌う曲との相性はとても良いです。ヨルシカもとても澄んだ音で聴かせてくれます。
一方で、大声で叫ぶような歌い方をしている曲やロック、EDMはあまり向いていません。
目立つ音だけが際立って強くなってしまうのでうるさい感じになることがあります。特にロックやEDMは特定の音が強く出ることが多いので、反響効果が裏目に出ることが多いです。
<低音>聴き疲れしない感触に仕上がっている
低音についても曲全体を支えるだけのしっかりした存在感があります。
縁の下の力持ちのような感じで長時間聴いていても疲れにくく、うるさくならない具合です。
ただ、特別強調もされていないのでお腹の底にズシンズシン響くようなイヤホンが好きな方には物足りないかもしれません。普段から低音が強いイヤホンを使っていると軽かったり、弱いと感じる可能性があります。
前述したロックに向かないという特性はこのあたりも含めてですね。
【解像度】全体的にクリアだが一音がぼやけることがある
項目 | 評価 | 項目 | 評価 | 項目 | 評価 | 項目 | 評価 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
原音再現 | ◯ | 明瞭さ | ◎ | 定位感 | ◯ | 分離感 | △ |
解像度(音の明瞭さや一音ずつの分離)は全体的に高めです。
安いイヤホンだとカットされてしまうような音でも安定して表現してくれるので厚みがあり、よくいわれる「聴こえなかった音が聴こえる」だけの実力はしっかり備えています。音の定位(どちらの方向から聴こえてくるか)もオーケストラで聴き分けができるレベルです。
ただ音響構造で音が増幅されたようになる関係で、原音に忠実かどうかは意見が分かれるところかもしれません。
また、音の分離感に関しては音響構造で反響しているためなのか、やや弱めです。
一音一音を注意深く聴いていると周りの音と響き合うせいか多少ぼやける感じがあります。この響きこそ「HA-FX100T」の良さなのですが、重なった音の中から楽器の細かな種類や付け足したエフェクトまではっきり聴き分けたい、という用途だと厳しそうです。
<分離感は改善可能>「スパイラルドット++」を使うとクッキリ
音の分離感が弱めといいましたが、実はイヤーピースを変えるだけで改善されます。
「HA-FX100T」のデフォルトイヤーピースは「スパイラルドット」なのですが、「スパイラルドット++」に変えると音がくっきりします。ついでに「スパイラルドット」はサラサラした手触りが独特なので、よくあるイヤーピースの質感が好きな方も「スパイラルドット++」の方がおすすめです。
ただ分離感はデフォルトでも普通に音楽鑑賞を楽しむ分なら特別不満を感じるものではありません。
「スパイラルドット++」はあくまでも「スパイラルドット」だと音がぼやけた感じがする、ひとつひとつの音をもっとくっきり聴きたい、という方に適した選択肢です。
【ハイレゾ】対応はしていないが表現力で補えるレベル
「HA-FX100」はハイレゾには対応していません。
ハイレゾ音源を豊富に持っていたり、ハイレゾ対応のサブスクを利用している方にとっては残念なポイントになります。
ただ音響構造のおかげでイヤホン自体の表現力がかなり高いので、ハイレゾ環境と比較しても正直あまり気にならないです。
ハイレゾ音源をハイレゾ対応イヤホンで聴く時というのは、私の感覚では「音の厚み」が増します。
ハイレゾはごく小さな音や人間には聴き取れないような音まで記録した音源のことを指し、CDの3~6倍以上もの情報量といわれています。シンプルに表現するなら楽器の奏者が増えて、CD音源だと1人だったのがハイレゾだと10人になる感じです。歌でいうならソロか合唱か、のようなイメージですね。
なので聴こえる音が全く変わるといったことはなく、「HA-FX100T」がハイレゾイヤホンと比較して音質面で大幅に勝る、劣るということはないです。
「HA-FX100T」の音響構造も疑似的ながら音を増幅しているようなので、ハイレゾ環境を整えていていて日頃からハイレゾ音源に親しんでいる、という方でなければ「ハイレゾっぽさ」を感じるには「HA-FX100T」で十分かもしれません。
Victor 「HA-FX100T」の装着感や扱いやすさ
「HA-FX100T」は軽さや装着感も非常に優れています。
これまでにワイヤレスイヤホンの使用感で、
こういった悩みを抱えていた方にはぜひ試していただきたいです。
【超軽量】ワイヤレスイヤホン最軽量クラスの片耳4.2g
「HA-FX100T」は片耳4.2gで完全ワイヤレスイヤホンとしては最軽量の部類です。
公式サイトでは片耳4.5gとなっていますが、0.01g単位のデジタルスケール(電子はかり)で計量したところ4.2g(多少の誤差があるため0.1g単位までで判断)でした。
長時間着けていてもイヤホンの装着で疲れるということは全くないので、耳栓として着けているだけなら存在を忘れてしまうくらい軽いです。
しかもイヤホン本体がコンパクトな楕円形で角が耳に当たったりすることがないため、着けっぱなしにしていて痛くなることもありません。形状的に筒状なので持ちやすく、イヤホン本体もツルツルした素材ではないので、滑って落とす不安がないのも良いところです。
【付け方】装着する時は耳の縁に当たるようにするのがコツ
着ける時はニッパーくん(犬のロゴマーク)が水平になるように持ち、耳に入れます。
公式サイトだと上画像のような装着イメージになっていますが、耳に入れたら少し下側にひねって角度を調節するとうまくはまりやすいです(耳の形状は一人一人違うので自分にとって最適な角度を探してみてください)。
イヤホン本体が楕円形なので、ひねることでちょうど耳の縁に沿います。もともと軽いイヤホンを耳が支えてくれるので安定感も非常に良いです。
【磁石内蔵】左右のイヤホンがくっつくのでなくさない
イヤホンは磁石内蔵で左右がくっつくようになっています。
それほど強靱な磁石ではないのでくっつけた状態で吊り下げたりすると落ちそうになりますが、紛失防止には十分です。
ちょっと外して机の上に置いておこう、というタイミングでとても便利ですね。
【IPX4防水】雨や水しぶき程度の生活防水に対応
ケースではなくイヤホンのみになりますが、IPX4相当の生活防水に対応しています。
IPX4相当というのは正直、ワイヤレスイヤホンの中では飛び抜けて高い性能というわけではありません。プールで使いたい場合や入浴中に使用したい、といった使い方をしたいなら、IPX7やIPX8のイヤホンを選んだ方が無難です。
しかし外出先で使用中に突然雨が降ってきたや、台所や洗面所で水しぶきがかかるような場面での保険にはなります。特に水場での使用をメインに考えていないなら必要十分です。
まとめ
「HA-FX100T」は表現力を増しながら音に厚みを出す、という点において非常に優れたパフォーマンスを発揮します。
ハイレゾイヤホンは高くてなかなか手が出せない、ハイレゾ音源を持っていないから非対応の中でできるだけ良い音が聴きたい・・・「HA-FX100T」はそういったニーズにはぴったり合うイヤホンです。特にオーケストラの曲をよく聴く方はぜひお試しください。
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